セスジ

怖いお話をお楽しみください。

 会社員を務めるAさんは、ある日上司のBさんに夕飯の誘いを受けた。新築した家に招待するとのことで、かねてからBさんとプライベートで親交のあったAさんは喜んで応じた。新居でBさんの奥さんが作る手料理を堪能しながら会話に華を咲かせていると、Bさんのひとり娘である4歳のCちゃんが話しかけてきた。

「秘密の宝物、おじさんに見せてあげる」

いたずら顔でヒソヒソと話すCちゃんに付き合ってあげることにしたAさんが

「Cちゃんの宝物見たいなー!」

と手を出すと、Cちゃんが小さな手で握り締めたそれをAさんの手のひらに置いた。

それは、黄色く変色した1枚の大人の爪だった。

 

 薄気味悪く思い、早々に帰路についたAさん。自宅に帰りつき、先刻の出来事をBさんに伝えるべきかと悩みながらスーツを脱いで部屋着に着替えていると、ポケットの中に違和感を感じた。ポケットを裏返すと、バラバラと床に落ちたのは、10や20では到底足りないほどの大量の爪だった。それ以来、AさんはBさんの家には決して行こうとしない。